「人を見る目を養え」長州力の教えと、フリーランスで生きていくための才覚とは(池野慎太郎)【篁五郎】
■フリーランスは「仕事の評価を決めるのは自分ではない」を忘れずに
フリーランスは不安定で、収入も毎月違う。それでも独立して一国一城の主になりたい人は年代問わず増えている。カメラマンとして、フリーランスの先輩として、これから独立を考えている人に先輩としてのアドバイスを聞いてみた。
「僕がアドバイスをするなんておこがましいです。でも、自分の体験からお話をすると、単に仕事をこなすだけでは駄目だと思います。
僕はモデルルームや住宅の写真を撮る仕事をしています。そのときに心がけているのがコミュニケーションです。
僕は、新しいクライアントから依頼がくると相手のリサーチから始めます。それからコミュニケーションを取っています。それは、相手が僕にどんな写真を撮って欲しいのかを知るために欠かせないからです。クライアントの要望を聞いて「こんな写真がいいのかな」とイメージを膨らませておく。コミュニケーションを取ることでいい写真が撮れるんです。
いい写真は自分にとってではなく、相手がいいと思える写真です。僕の仕事は、相手があってこそ成り立つと思っています。
それにこの業界は狭いので、カメラマンの評価はすぐに知れ渡ります。だから気が抜けません。大変だけど「いい写真ですね」と言われた瞬間、それまで溜まった疲れが吹っ飛ぶくらい嬉しいですね」
フリーランスはクライアントから評価されなければ仕事が打ち切られてしまう。池野さんがカメラマンとして生き抜くためにも「相手のことを考える」というのは、大切な考えであろう。仮に自分で自分でメディアを立ち上げても、読者のことを考えないと誰も見向きはしない。フリーランスとして必須といえる。現在、結婚されていて、子宝にも恵まれた池野さんは、家庭ではどんな顔を見せているのだろうか。
「家庭でも仕事と同じです。僕の家は奥さんファースト。Xで僕が奥さんに抱きかかえられた写真をアップしたことありますけど、家の中はあんな感じですよ(笑い)でも、それで家族が笑顔で過ごせるならいくらでも抱きかかえられます」
男性が女性を引っ張っていき、「だまって俺について来い」というのは時代遅れになった今、池野さんは、現在男性の鏡なのかもしれない。しかし、それは決して「弱さ」や「情けなさ」ではない。常に家族のことを第一に思う現代の「男らしさ」といえる。
文:篁五郎